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起業・経営を続ける中で、法人印鑑(会社実印)の変更が必要になる場面は意外と多くあります。会社の商号変更や代表者交代、印鑑の紛失や破損など、理由はさまざまですが、手続きを正しく理解していないと、取引や申請に遅れや不備が生じる可能性があります。
本記事では、起業・開業を目指す方や既に法人を運営している方に向けて、法人印鑑の変更理由から具体的な手続きの流れ、注意点、変更後の対応までを詳しく解説します。自他ともに起業支援をしてきてたタチアゲの視点で実務的なノウハウも交えていますので、スムーズかつ確実に手続きを進めたい方はぜひ参考にしてください。
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【結論】法人印鑑の変更は「改印届」で手数料無料・最短即日完了
法人印鑑の変更(改印)は、本店所在地を管轄する法務局に「印鑑(改印)届」を提出するだけで完了します。提出方法は窓口・郵送・オンラインの3通りがあり、費用は無料です。(他の登記変更を伴う場合は別途登録免許税が発生します)
必要書類を正しく揃えて申請すれば、不備がない限り最短で即日〜翌営業日に新しい印鑑が有効になります。
ただし、改印は手続き自体はシンプルでも、変更後の対応を怠ると取引停止や契約書の差し戻しなどのリスクがあります。銀行口座の届出印や各種契約、許認可手続きなども並行して切り替える必要があるため、「改印届を提出したら終わり」ではなく、その後の実務も含めて計画的に進めることが大切です。
法人印鑑とは?変更が必要になる理由
法人印鑑は会社の“顔”であり、法人としての信用を示す象徴です。普段は使う機会が少なくても、契約や融資、不動産取引などでは必ず求められます。だからこそ、変更の必要性を正しく理解しておくことが大切です。
変更が必要になるのは、次のようなケースです。
法人印鑑(会社実印)の役割
法人印鑑とは、会社を代表する「公式な実印」のことを指します。法務局に届出を行い、印鑑証明書とセットで用いられることで、押印の真正性が担保されます。
銀行融資や大口の契約、役所や官公庁への提出書類など、「会社としての意思決定を示す場」では必ず必要になるため、法人の数ある印鑑の中でも最も重要といえます。
- 法務局に登録された法人の公式実印
- 契約書、官公庁提出書類、融資契約、不動産登記などで使用
- 印鑑証明書によって印影の真正性が証明される
変更(改印)が必要な主なケース
法人印鑑の変更は頻繁に行うものではありませんが、以下のような場合には「改印」が必要です。
社名が変われば、印鑑の刻印も変えるのが基本です。

筆者である僕も、会社の法人を「株式会社GENSEKI」から「株式会社タチアゲ」に変更した際に法人印鑑を買い替えました。
代表者名が入っているタイプの実印では、交代に伴って必ず新しい印鑑が必要になります。
第三者に悪用されるリスクがあるため、すぐに改印届を提出して差し替える必要があります。
印影がかすれたり欠けて判読できなくなった場合は、契約書が受理されないリスクがあります。
同じ管轄内での移転なら不要ですが、管轄外に移転する場合は再度登録が必要です。
必須ではありませんが、「節目で印鑑を新しくしたい」という理由で変更することも可能です。
法人印鑑変更の流れ(改印届の手順)
では実際に印鑑を変更するとなった場合、どのような流れで手続きを進めれば良いのでしょうか。改印は大きく分けて5つのステップに整理できます。
1. 新しい印鑑の作成
まずは新しい法人印鑑を準備します。法務局に登録できるサイズは直径1.0〜3.0cmの範囲で、旧印鑑と印影が異なることが条件です。
防犯の観点から、旧印鑑は廃棄するか、誤用を防ぐため厳重に保管しましょう。印鑑選びの詳しいポイントは【2025年版】法人印鑑作成ガイドで解説しています。
2. 必要書類の準備
改印届に必要な書類は次の通りです。
- 新しい法人実印
- 代表者個人の実印
- 代表者個人の印鑑証明書(発行から3か月以内)
- 印鑑(改印)届出書
これらを揃えれば、あとは届書に記入するだけです。
3. 届出書の記入と押印
届出書には、会社の商号や本店所在地、代表者の資格(代表取締役など)、氏名、生年月日を正確に記入します。書類の左上には新しい印鑑を鮮明に押印し、代表者個人の実印も押す必要があります。加えて、印鑑カードの引き継ぎ有無も記入しましょう。
4. 法務局への提出
提出は「窓口」「郵送」「オンライン」の3つの方法があります。
窓口 | 即日対応も可能 |
郵送 | 2〜3日余分にかかる |
オンライン | 電子署名が必要 |
いずれの場合も提出手数料は無料です。
5. 完了確認
提出が受理されると、新しい法人印鑑が正式に登録されます。念のため法人印鑑証明書を取得して印影を確認しておきましょう。印鑑カードは通常、従来のものを引き続き利用可能です。
変更後に必要な対応
法人印鑑の改印手続きが完了しても、それで終わりではありません。
実務上は、新しい印鑑をきちんと機能させるために「変更後のフォロー」が不可欠です。特に銀行や契約関係は旧印鑑のままでは処理できないため、忘れずに対応する必要があります。
銀行口座の届出印変更
法人銀行口座で使用している届出印は、改印に合わせて必ず変更が必要です。
銀行に届け出ている印影と法務局に登録された法人印鑑が異なると、振込や契約に支障が出る可能性があります。
- 窓口で「届出印変更届」を記入
- 新旧の印鑑、通帳、法人印鑑証明書を持参
- 紛失が理由の場合は、口座を一時停止したうえで手続きするケースもある
銀行によって必要書類が微妙に異なるため、事前に電話で確認するとスムーズです。
契約書や許認可申請での印鑑切り替え
新しい法人印鑑は、今後の契約や申請で必ず使用することになります。特に官公庁への許認可申請や不動産契約などでは、新しい法人印鑑証明書の提出が必須になるため、早めに取得しておくと安心です。

取引先に対しては、改印した旨を伝えておくと「契約時に印影が違う」というトラブルを未然に防げます。
代表者や本店住所の整合性チェック
改印届を提出した際に使う代表者個人の印鑑証明書と、登記簿上の住所が一致していないと受理されないケースがあります。
もし引越し等で住所が変わっている場合は、代表者住所変更登記も併せて行う必要があります。
住所変更登記には別途登録免許税(資本金に応じて1〜3万円)がかかるので、計画的に進めましょう。
旧印鑑の取り扱い
旧印鑑は廃棄してしまうのが理想ですが、記録として残したい場合は「絶対に使用しない」というルールを設けて金庫等で保管してください。社内には改印した日付と理由を文書で残し、稟議書や取締役会議事録などに明記しておくと、後々のトラブル防止になります。

僕も旧印鑑は思い入れがありますので廃棄はせず金庫で保管して残しています。
よくある失敗・注意点
法人印鑑の変更手続きはシンプルですが、実際に対応してみると小さな落とし穴に引っかかるケースも少なくありません。ここでは、特に多い失敗パターンとその防止策を整理します。
必要書類の不足・不備
最も多いのが「必要書類が揃っていなかった」ケースです。
- 印鑑証明書の有効期限が3か月を過ぎていた
- 代表者個人の実印を持参し忘れた
- 商号や住所の記載が登記簿と異なっていた
こうした不備があると、再提出や登記補正を求められて余計な時間がかかります。提出前に「チェックリスト」を作って確認すると安心です。
代表者住所の不一致
代表者が引越しをしていて、登記簿上の住所と印鑑証明書の住所が異なる場合、改印届は受理されません。
この場合は、まず「代表者住所変更登記」を済ませ、その後に改印届を提出する必要があります。
銀行・契約での印鑑切り替え忘れ
法務局で改印が完了しても、銀行や取引先に新印鑑を届け出ていないと「印影が一致しない」として取引が滞ることがあります。
特に金融機関の届出印は見落とされやすいため、改印と同時に変更するスケジュールを立てましょう。
旧印鑑の放置
旧印鑑を廃棄せずに机の引き出しなどに放置してしまうと、誤用や盗難のリスクがあります。廃棄するか、厳重に保管し「使用禁止」と明記しておくことが重要です。
専門家・サービスの活用

法人印鑑の変更手続きは自分で行うことも十分可能ですが、代表者変更登記や本店移転登記などと同時に発生する場合は手間が増えます。「他の登記もまとめてやりたい」「手続きを確実に終わらせたい」という場合は、専門家やサービスを活用すると効率的です。
司法書士・行政書士に依頼する場合
司法書士や行政書士に依頼すれば、必要書類の作成から法務局への提出までを代理してくれます。
報酬は数万円程度かかりますが、他の登記変更とまとめて依頼すれば効率的で、手戻りのリスクを最小限にできます。
オンライン作成ツールを活用する場合
近年はオンラインで改印届や登記関連書類を自動生成できるサービスも普及しています。画面の指示に従って入力するだけで必要な書類が完成するため、自力で進めたいけれど不安がある方におすすめです。
タチアゲの起業コーディネート
起業準備中の方や法人運営に不安がある方向けに、タチアゲの起業コーディネートでは会社設立から法人印鑑変更、役員変更、本店移転まで一括でサポートしています。特に「設立時からしっかり整えておきたい」「改印を機に体制を見直したい」という方には心強い伴走役になります。
まとめ
法人印鑑の変更は、会社にとって大きな節目のサインです。商号変更や代表者交代、印鑑の紛失・破損といった理由から必要になることが多いですが、手続き自体は法務局への改印届提出だけで完了し、手数料も無料です。
ただし、そこで気を抜いてしまうと、銀行や契約先で「印影が違う」と手続きが止まってしまうこともあります。改印はゴールではなくスタートです。その後の銀行届出印や契約書、許認可関係の切り替えを含めて、一連の対応をセットで考えることが重要です。
この記事で紹介した流れを押さえておけば、いざという時にも慌てずスムーズに変更手続きを進められるはずです。法人経営においては、小さな手続きの遅れが信用問題に直結することもあるため、日頃から正しい知識を備えておきましょう。