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「初めて従業員を雇用したら、どんな手続きやルール整備が必要なのだろう?」──個人事業主や中小企業オーナーにとって、“人を雇う”ことはビジネスを一段上のステージへ押し上げる大きなチャンスです。しかしその一方で、社会保険の加入や就業規則の作成、給与設定など、やるべきことが一気に増えるため戸惑う方も多いでしょう。
本記事では「従業員を雇用したら」まず取り組むべき基本的な手続きや労務管理のポイント、人件費の考え方、助成金の活用法などをプロの目線で解説します。これを読めば、雇用スタート時の不安を一掃し、安心して事業を拡大するための準備が整うはずです。
1. 従業員を雇用したら最初にやるべきこと

1-1. 雇用契約書・労働条件通知書の作成
従業員を雇用したら、まずは雇用契約書または労働条件通知書で就業条件を明示するのが大原則です。
- 賃金・労働時間・休日休暇・業務内容といった基本情報は書面で交付する義務があります。
- 「口頭で説明したから大丈夫」と思いがちですが、後々のトラブルを防ぐためにも、必ず書面(紙または電子)で提示しましょう。

「起業初期のころ私も、契約書の整備を後回しにしてしまい、入社後に勤務時間の解釈が違うといった齟齬が起きかけました。お互いに認識のズレがないよう、採用前〜雇用直後にきちんとした書類を作るのがベストです。」
1-2. 必要書類の回収と提出
雇用契約に加え、従業員から回収する書類も複数あります。
- 扶養控除等申告書
源泉徴収額を適正に計算するために必須。 - 前職の源泉徴収票
その年の課税状況を正しく引き継ぐため。 - 雇用保険被保険者証
すでに雇用保険に加入歴がある場合に提出してもらう。

一方で事業主側は、雇い入れ通知書(労働条件通知書)、各種保険の資格取得届などを官公庁に出す必要があります。ミスや提出漏れが起こりやすいため、あらかじめチェックリストを作っておくと安心です。
1-3. 給与計算方法の確認と準備
従業員を雇うと、給与支給が毎月発生するため、その計算方法を確立しましょう。
- 締日・支払日の設定
例えば毎月20日締め、翌月5日払いなど会社独自に決める。 - 源泉徴収・社会保険料の控除
給与から天引きするものを正しく把握し、納付を行う。 - 給与計算ソフト・クラウドツールの導入検討
freee人事労務やSmartHRを利用すると、社会保険料率や雇用保険料率の改定に自動対応でき、初心者でもミスを大幅に減らせます。

「給与計算は小規模事業者にとって地味に負担が大きい業務ですが、クラウドツールを使うと事務作業がかなり楽になります。私自身、導入当初は複雑な設定が必要と思っていましたが、案内に沿って入力するだけで導入が完了しました。」

2. 社会保険・労働保険手続きの基本
2-1. 社会保険(健康保険・厚生年金)の適用

法人を設立した場合や、常時5人以上の従業員を雇用する個人事業は社会保険への加入が義務付けられています。
適用対象となったら、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を提出。
従業員一人ひとりを被保険者として登録するための届出。入社日から5日以内が目安です。
健康保険料・厚生年金保険料は会社と従業員で半分ずつ負担。給与計算時に従業員負担分を天引きして納付しましょう。
パートタイマーやアルバイトでも、1週の労働時間・1日の労働日数が正社員の4分の3以上なら社会保険の加入義務が生じます。
また、従業員規模が一定以上(2024年10月以降は51名超)になると「特定適用事業所」として週20時間以上働くパートにも社会保険加入が拡大適用されるので、将来的な従業員数の増加にも注意が必要です。
2-2. 労働保険(労災保険・雇用保険)の適用

雇用する労働者が1人でもいれば、労災保険は必須。

自分は雇用保険に加入する義務があるか、分かりやすく判断できるようにフローチャートを作成してみました。参考にしてください。

雇用保険は週20時間以上・31日以上の継続雇用見込みがある従業員などが対象になります。
事業開始後10日以内に労働基準監督署へ提出し、労災保険の成立を届け出ます。
雇用保険対象者を初めて雇用する際、ハローワークへ提出。
対象従業員ごとに提出し、被保険者証が交付される。

意外と忘れがちな書類がこの“保険関係成立届”。私の知人経営者は、後回しにしてしまい労災事故が起きたとき非常に困ったそうです。慌てず雇用スタート時点で労働保険の手続きを完了させるのが鉄則です。ちなみに会社役員は労働保険には加入できませんのでご注意ください。
2-3. 保険料の納付と注意点
- 社会保険料
毎月の給与から社員負担分を天引きし、会社負担分と合わせて納付。 - 労働保険料
労災+雇用保険を合わせて「労働保険料」とし、概算・確定申告で精算する。
- 加入義務があるのに放置すると、後でまとめて追徴されたり罰則が科される可能性があります。早めに完了しましょう。
3. 就業規則と労務管理のポイント
3-1. 就業規則の作成義務とメリット
従業員数が常時10名以上になった場合、就業規則を作成し労働基準監督署へ届け出る義務があります。
- 法定必須記載事項
労働時間、休日、賃金、退職、解雇など。 - 任意作成でも有効
10名未満の会社でも、トラブル防止・人材定着策として就業規則を整備するメリットは大きいです。
- 小規模事業者のうちは“就業規則はまだ早い”と思われがちですが、ルールが曖昧なまま人数が増えると後々揉めやすくなります。早めに簡易版を作り、必要に応じてアップデートする形がおすすめです。
3-2. 労働時間・残業管理と36協定
- 支法定労働時間
1日8時間、週40時間を超える場合は原則違法。 - 36(サブロク)協定
法定労働時間を超えて残業や休日出勤をさせる際は労使間で締結し、労基署に届け出る必要がある。 - 割増賃金
時間外労働25%増、深夜労働(22~翌5時)25%増、休日労働35%増。月60時間超の残業には中小企業でも50%増が適用。
3-3. 有給休暇とハラスメント防止
- 有給休暇
6ヶ月勤務し8割以上出勤した労働者に10日の年次有給休暇を付与。会社は5日分の確実取得を義務付けられています。 - ハラスメント対策
パワハラ、セクハラなどの防止策や窓口を就業規則内で明示し、従業員に周知。 - 労務管理システムの活用
勤怠打刻や有給管理をデジタル化することで漏れや計算ミスを防ぎ、労使トラブルを減らせます。
4. 人件費の考え方と助成金の活用
4-1. 人件費の内訳と給与設定
「人を雇う=固定費が増える」ため、あらかじめ全体像を理解しておきましょう。
(健康保険・厚生年金・雇用保険など)。

「最初に給与を高く設定しすぎて、社会保険料負担を甘く見積もっていたためキャッシュフローが圧迫された例をよく聞きます。売上が安定するまでは、給与テーブルを少し抑えめにし、手当や賞与で柔軟に調整する方法もあります。」
4-2. 雇用に使える代表的な助成金
助成金は返済不要で、条件に合えばまとまった金額を得られるため、経営者はぜひ知っておきたい制度です。
- キャリアアップ助成金
非正規から正社員へ転換した際などに支給される。1人あたり最大57万円(中小)などコース別の手厚い助成。 - 特定求職者雇用開発助成金
高齢者や障害者など就職困難者を雇い入れると、1人あたり最大数十万~百万円超の支援が得られる場合も。 - トライアル雇用助成金
未経験者などを試行的に3か月雇用し、本採用前に4万円/月を支給(障害者なら8万円)。
4-3. 助成金申請の流れと注意点
- 事前計画書の提出が必要なものが多い
(例:キャリアアップ助成金の「キャリアアップ計画」)。 - 要件を満たさないと不支給
雇用契約や社会保険手続きをきちんと行っているか、残業代の未払いがないか、など基本的な労務管理が整っていることが前提。 - 社労士など専門家に相談
制度改正が頻繁に行われるため、プロにサポートを依頼すると申請漏れを防ぎやすい。
5. 専門家・クラウドツールの活用で効率アップ
5-1. 社会保険労務士(社労士)の活用
- 業務範囲
社会保険手続き代行、給与計算、就業規則作成、助成金申請サポートなど。 - メリット
労務トラブルの予防、法改正への迅速対応、助成金活用の最適化など、時間とリスクを減らす効果がある。 - 依頼タイミング
初めて従業員を雇った直後、あるいは社員数が10名を超えそうな段階で顧問契約を検討するケースが多い。

“自分でやる”のも一つの手ですが、特に助成金は複雑なので、社労士に相談した方が結果的に受給額が増えたり、手続きミスを防げます。費用対効果を考慮すると有益な場面が多いです。
タチアゲに登録している社労士の先生に実施したインタビューが下記です。


5-2. クラウド労務管理ツールの導入

SmartHRやfreee人事労務:入社手続きから年末調整までワンストップで完結できる代表的サービス。
- 法令改正への自動対応、ペーパーレス化、勤怠や賃金台帳などの一元管理。
- 社員数が少なければ月額数千円~無料プランあり。社員数が増えるほど手作業よりトータルコストはむしろ下がる傾向。
5-3. どちらを選ぶべきか? 併用もアリ
- クラウドツール
日常の労務事務を効率化・自動化する。 - 社労士
法的アドバイスや柔軟なコンサルが可能、助成金やトラブル対応でも強い。

両者は競合ではなく、併用することでそれぞれの強みを生かせます。ツールで事務を省力化しつつ、判断が必要な場面で社労士に相談するといった役割分担もおすすめです。
6. 【Q&A】よくある疑問への回答
Q1. 「従業員が5人未満なら社会保険に入らなくてもいい?」
Q2. 「雇用保険は週20時間未満のパートでも加入義務がある?」
Q3. 「就業規則は10人未満なら作らなくていい?」
Q4. 「助成金は申請すれば必ずもらえる?」
Q5. 「給与計算を自力でやるのとクラウドツール利用、どちらがおすすめ?」
7. まとめ
本記事のまとめ

「社員を迎え入れるのは、事業を次のステージへと飛躍させる大きなチャンスです。最初は手続きや労務管理が煩雑に思えるかもしれませんが、ポイントを押さえれば決して難しくありません。今後の拡大を見据えて、適切な対応を怠らないようにしましょう。」
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